American Wine Journey::カリフォルニアワイン、アメリカワイン紀行ブログ

Anderson's Conn Valley "Eloge" 1998 Napa Valley

 

カリフォルニアでもあまり聞かない作り手。日本では話題にもあがらない。

しかもヴィンテージは、エルニーニョに悩まされた1998年。評論家の評価も低い。

しかし・・・、結構なお値段・・・。

知らなければ手を出せるワインではない。

 

Napa Valleyにいた頃このワインを一度だけ試飲した事がある。ヴィンテージも同じ98年。

もう6年以上前になる。

 

毎週金曜日の朝10時にPatz & HallというNapa Valleyにあるワイナリーに集まってブラインドティスティングを

する勉強会があった。地元のソムリエが中心の会だが、たまにここのワインメーカーも参加してテクニカルな話しなどを

聞かせてもらい非常に勉強になる会だった。

 

そこでこのワインと出会った。

 

熟したカシス、ブラックベリーの果実の香りに加えシガーボックスや枯葉、スーボワと複雑な風味。カリフォルニアなどの新世界のワインはこの複雑な風味が少なく、熟したフルーツの風味一辺倒になるケースが多い。

 

これは間違いなく旧世界だ!

 

口中でも新世界には通常見られない存在感のある酸味、タンニンの骨格、高すぎないアルコール度数(13度台)など、どれをとっても旧世界のワイン。

 

ここまでくればもうボルドーとしか思えない。

 

しかも、この凝縮感に香りの華やかさ、2級であってもおかしくない!

 

自信たっぷりでボルドーの2級レベル、と答えた。他のソムリエ達も同意見。話しはどのシャトーか、というところまで進んでいた。

 

しかし、Auberge du Soleilのヘッドソムリエであるクリスがボルドーだと思い込んでいる我々に問い始めた。

 

この酸のレベルに対して果実の熟度が高くないか、この熟成度合いに対してNon Fruit Flavors(フルーツ以外の風味)の割合がやや小さくないか。最近流行りのNapa Valleyのカベルネに無い要素が多いが、これはNapa Valleyのカベルネだ。ただし、流行りのモダン派ではなく伝統派の作り手。90年代のStag's Leap Wine CellarsかChateau Montelenaに似ている。ただ、凝縮度合いが中間的だ。ならば地理的にも中間的と言えるAnderson's Conn Valley。このぐらいの熟成度合いからして、このややグリーンな要素が見られた年は98年だけだ。

 

圧巻だった。Napa Valleyのソムリエとして30年以上のキャリアに裏打ちされた分析力。さすがとしか言いようがない。

シガーボックスや枯葉の香りを見つけた瞬間に"ボルドー!"と決めつけてしまう未熟さを情けないと悔しさを

噛みしめつつ、最高の指導者とめぐり合い間近でカリフォルニアワインについての知識を享受できる恵まれた環境を誇らしく思った。

 

それから6年。月日も流れたが場所も何千マイルも西の東京だ。

 

抜栓し少し時間をおいてから口に運んだ。

 

以前よりシガーボックスの風味が更に増しよりボルドーに近い味わいになっている。しかし、その奥に隠れている果実の熟した甘さ、カリフォルニアの太陽が感じ取れる。

 

これはボルドーではない。

 

凝縮感のある甘い果実味、複雑さを加えるシガーボックスや枯葉、バランスのよい酸とタンニンからなる凛とした骨格、延々と続く余韻。

これぞ古き良き時代のNapa Valleyのワインだ。そして、6年の月日を経て、自信を持ってそう答えられる。

 

このワインを"My" Wine of The Yearに迷うことなく選んだ。

 

品評会など、客観的な分析による評価であれば・・・、他のワインを選んだかもしれない。特に今年は素晴らしいワインを多く飲む機会に恵まれた。

 

しかし、最後に心に残ったのは・・・、このワインだった。

 

飲んだ瞬間にさまざまな想い出がクリスの顔と共に思い浮かんだ。もしかすると、とても客観的に分析などはできない心情、主観的な感情に陥っていた事がこのワインを選んだ原因かもしれない。

 

ちょっと公正さに欠ける結果になってしまったが・・・、ただ、ワインとは元来そういうものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソノマ郡の北にHealdsburg(ヒルズバーグ)という小さなダウンタウンがある。この街にはファーストフードやチェーン展開をしている店がほとんどなく、もう一つのアメリカをごく身近に感じられる。

 

とは言え、南部で見かけるカウボーイがサッソウと入ってくるような荒々しいバーが乱立しているのではなく、逆に、落ち着いたカフェやレストラン、小さく拘った雰囲気のあるブティックなどが並び、そこのオープンカフェでコーヒーを飲みながら通り過ぎる人たちを眺めていると、何もしていない事に充実感を覚え有意義な時間を過ごせる。何かしていないと時間の無駄だと感じてしまいやみくもにPCを取り出してしまう都会のカフェとは正反対だ。

 

さて、そのHealdsburgでブランチを楽しんだ後にほんの少し車で北西に進むと、のどかなワイン産地に入る。そこがDry Creek Valleyだ。

 

両側を山に囲まれ、中央にワイン畑が広がる風景はどことなくNapa Valleyに似ているとも言えるが、実にのどかであり、観光客とそれを迎える観光化された大規模なワイナリーがひしめくNapaとは趣を異にし、むしろ日本の田舎の田園地帯を思い出させる。

 

気候的にはやや涼しいと言えるが、ちょっと南でPinot Noirで有名なRussian River Valley(ルシアン リヴァー ヴァレー)程ではないし、霧の影響はほとんど受けない。

 

だからと言ってCabernet Sauvignonが熟す程温暖でもなく、育つには育つが特筆に値するような代物はあまり作られていない。Zinfandelで有名なRafanelliも作っているが、Napaのものと比較するとよりフレッシュな果実味があり、かつミントやユーカリの香りが感じられる事からボルドー好きにも勧められる。

 

ただ、やはりこの地を代表するブドウは何といってもZinfandelだろう。そして、この地の作り手達がもっとも誇りを持っているブドウ品種だとも言える。

 

スタイル的には、濃厚で樽の風味が強くアルコールが高くアピール性があり高級感をかもし出し、ワインショップでもれなく高得点ポイントの札が桁違いの値段を無理やり正当化させるために艶やかに飾られた流行りのZinfandelとは一線を置く。

 

また、近くのRussian River Valleyで取れるZinfandelの様な、Pinot Noirに共通するエレガントさを持つわけでもない。

 

柔らかく滑らかなテクスチャーはお隣のAlexander Valleyと共通するが、一本筋が通っておりそのバックボーンを滑らかな果実味が覆う。その果実味もZinfandelらしくジャムっぽさはあるが、もっと暖かい産地のZinfandelの煮詰めたような甘さを主張するものではなく、フレッシュさも同時に感じる。ちょうど新鮮でみずみずしいベリーにほんの少しラズベリーのクーリ(ピューレ状のソース)をつけたような印象を受けるだろう。

 

収穫時期を遅くし濃厚に仕上げ新樽を使いアピール性を高めようとする派手な作り手はごく稀であり、良い意味で田舎臭さが伝わってくるワインだ。

 

様々な生産者がいてそれぞれ個性豊かだがこのDry Creekの個性は皆な共通している。

 

David Coffaro、 Lambart Bridge、 Nalle、 Rafanelli、 Pezzi King、 Preston、 Quivira等など・・・。

 

全て車ですぐ回れる距離にあり、味の印象を忘れる前に次ぎのワイナリーに行けるから、比較テイスティングには最適だ。どこも豪華なテイスティングルームなどないが、素朴だが趣のある雰囲気はどことなく近くのダウンタウンHealdsburgと共通しており、それがワインのスタイルの表現そのものにもなるから面白い。

 

上記のワイナリーのZinfandelは、大体が日本でも入手は可能であり、そうでないものでもアメリカの大都市に行けばお目にかかれる。ただ、その素晴らしさがちゃんと伝えられていないのか、あまり人気のあるワインではないようだが・・・。

 

特筆すべきは、この地元に行かなければなかなかお目にかかれることはなく、Napa Valleyで働いていた時でさえ簡単には手に入らなかったワインがある。Napa Valleyで働くソムリエでさえ認識できたのはごく一部で地元密着型のワイナリーだと言える。

 

ただ、地元での評判は他の追随を許さず、どのワイナリーに行っても、"必ず寄って行きなさい!!!"と勧められる。

 

Bella(ベラ)というワイナリーで、まさにDry Creekの秘宝と言えるだろう。

 

このワイナリーを訪れた時にじっくりとテイスティングしたが、まさにその味わいは、前述のこのDry Creekの個性を忠実に表しており、更に透明度が高くより鮮明に口中でテロワールが大きくこだまする。

 

前回紹介したSausal(ソーサル)と飲み比べればそのテロワールの違いを明らかに感じる事ができるだろう。また、流行りの高級Zinfandelと比べれば、このブドウ品種に厚化粧は必要ない事をまざまざと見せつけられる。何とか東京で再会したいものだと常々願ってはいるが未だにお目にかかれない。非常に残念だし思い出すと懐かしさでいっぱいになる。

 

東京のスタバに入れば、都会の喧噪を一瞬忘れさせてくれる錯覚を起こす。一瞬癒されるがまたすぐに現実に帰る。それはスターバックスというトップ企業により計算され尽くされ作り上げられたオアシスだからかもしれない。ありがたいが都会ではこれが限界だろう。

 

しかし、Healdsburgの小さなカフェでは、駆け引きのないピュアで透き通った飾り気のない美しさが心を優しく包んでくれる。

 

ふとそのカフェが東京にあったらと思う時もあるが、もしかしたら、この大都会では物足りなく感じてしまうのではとも感じる。

 

そして、それがこのBellaという駆け引きのないピュアなZinfandelに東京という都会でお目にかかれない理由なのかもしれない。

 

ブログを書くのは・・・、半年以上ぶりです・・・。

 

かなりサボってました・・・。

 

言い訳ですが・・・、ワインの試験とソムリエコンクールを受ける為に空いている時間は全てワインの勉強に充てておりました・・・。

 

ただ、お蔭さまである程度満足のいく結果を残せたと思います!

 

まず、Court of Master SommelierのAdvanced Sommelier試験に合格しました!

これは、もともとイギリスの団体ですがアメリカにも同団体がありどちらの国でも受けられます。

 

4段階の試験があり、最後の試験に合格すればMaster Sommelier (MS)になれます。

 

今回は3段階目の試験でした。次の最終Master Sommelier試験は2013年!

何とか合格できるように頑張ります!

 

そして、第6回全日本最優秀ソムリエコンクール。初めてのコンクールへの挑戦でした。

Master Sommelierの為の勉強は何年も前から継続して続けてましたが、コンクールへ出たことはありませんでした。

 

機関誌ソムリエで、"座談会"という題名で、阿部さん、石田さん、佐藤さん、中本さんといった日本を代表する

ソムリエ4人がコンクールへ挑戦する事の意義を語っていたことに触発された事、39歳という自分の年齢を考えると最後のチャンスかもしれないと思った事、そして、座談会でも触れていましたが、挑戦する事にデメリットは何一つないという事、が申込書が自宅へ届いた時に思い浮かび、挑戦することに決めました。

 

結果は準決勝進出で終わりましたが、会場の名古屋のホテルで日本中のソムリエ、また上記のトップソムリエを含めた日本を代表するソムリエとも出会い、多くの刺激、エネルギーを得られた経験は何事にも代えがたい貴重な財産となりました。

 

残念ながら、決勝には出られませんでしたが、勝ち負け以上に得られた事は大きかったと確信してます。4人のトップソムリエが話していたコンクールへ挑戦する事の大きな意義をこの経験を通して再認識できたと思います。

 

・・・・・、というのがブログをサボっていた理由ですが、これからは月に一回のペースでアメリカのワイン産地を紹介していこうと思います。

 

えーっと、ナパヴァレーを抜けて、ソノマの北、Alexander Valleyに入ったところでした。では、次回はその隣のDry Creek Valleyを紹介します!非常に懐かしい街、Healdsburgが近くにあるワイン産地です!・・・、また長いブログになると思います。早い時間に書き始めよう!

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千葉和外 Kazuto Chiba
千葉和外 Kazuto Chiba

1972年6月生まれ。
92年 都内フレンチレストランに入店。ウェスティンホテル東京を経てカリフォルニア州ナパヴァレーカレッジ修了後「オーベルジュ ド ソレイユ」に入店。07年帰国後、西麻布「サイタブリア」シェフソムリエとして2年半勤め、現在は麻布十番のフレンチレストラン「Hortensia(オルタシア)」にてチーフソムリエを勤める。

The Court of Master Sommelier認定Advanced Sommelier
第六回全日本最優秀ソムリエコンクール セミファイナリスト

ワインスクール アカデミー デュ ヴァン講師 アメリカワインクラス担当

hortensia

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